PIP山下緑というアイドルについて


僕は今週PIPについて何か書こうという気はなかった。すでに僕の書きたいことはすべて書かれていたし、これ以上書くものもなかったからだ。

しかし僕は今から書かなければならない。
山下緑のことだ。

先週日曜日に行われたPIP第3回の定期公演。彼女の文章が話題になった。だが正直僕にはピンとこなかった。いや、正確には理解できなかった。
確かになんかすごい。でもなんかすごいというだけでもてはやすのは、かつてAKB峰岸の坊主騒動の時なんか不気味だというだけでAKBを批判していた悪意ある傍観者たちと変わらないと思った。
だからこの時僕は周囲の熱狂に馴染めなかったし彼女に対しても興味がわかなかった。

しかし昨晩twitterで彼女のこの文章を見てしまった。

BrnUn0-CAAEYxb5

震えた。あまりのことに精神が動揺し、自身の退行を止めることができなかった。それからひたすらアリス十番のアリスのロッキン・ホラー・ショーを何十回もヘドバンしながらリピートし、外が明るくなりはじめてやっとヘタヘタとこの文章を書いている。

1987年の下半期、芥川賞を受賞したのは池澤夏樹のスティル・ライフだった。その中にこんな文章がある。

“雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。

雪が降るのではない、世界が上昇しているのだ。
自身と外界との規定が変わるとき、その鮮烈な体験は体験した本人にしかわからない独特な表現を持って世界に提示される。

そして彼女もまたそれを表現した。
今までの自分とアイドルとしての自分。自身と外界との規定が変わるとき、彼女は心臓の鼓動が速くなったのではない、上半身の器官が何度も熱く、痛くなったのだ。
この表現こそが彼女がアイドルになったことを何よりも如実に示していた。

そして僕はあの公演の日、一人の女の子がアイドルになった瞬間に立ち会っていたのだ。
どうにかしてそのことを書き残しておきたかった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>